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辛い練習は効果がある?

部活動は教育的な背景

陸上オリンピック選手「為末大」さんの書籍の中でこのような記述がありましたのでシェアしたいと思います。

辛くない練習は効果がないのか 「辛くない練習をした時に練習をした感がないのだが、それは良いのか」 という質問をよくもらいます。 世の中によくある勘違いの一つに、 「練習効果があることは辛い」→「辛い練習をすれば練習効果がある」 というものがあります。 効果がある練習で辛いと感じることが多いのは確かですが、辛い練習とパフォーマンス向上は一緒ではありません。 言い換えると、「自分が主観的に感じる練習の辛さと、自分の身体に負荷がかかること、さらにはパフォーマンス向上効果があることは全てズレている」ということです。 一つの例で話しますと、自転車などを一生懸命漕ぐ練習はとても辛いです。 終わった後には充実感があり強くなった感じがします。 この時の筋肉による力の出し方は「ずっと発揮している」感覚で、空気椅子の状態に若干近く、常に筋肉を緊張させているので身体的に辛いと思います。 一方でプライオメトリクスという練習があります。例えばボックスの上から飛び降りてポンと弾む練習です。 瞬間に身体に圧がかかりますが、全力ペダリングと比べたら、身体的にはかなり楽です。 ですが、実際に身体の負荷を比べてみると、このプライオメトリクスのダメージの方が大きいのです。 しかも高いところから飛び降り、地面から反発をもらう時の筋肉をギュッと収縮して反発させるというのは、陸上競技本来の動きに近い動きです。 だから陸上競技のパフォーマンスを上げる観点からすると、基本的にはこのプライオメトリクス的なメニューをやるべきということになります(トレーニングフェーズによって異なりますが)。 私は日本では、この落とし穴にはまっている人が多いと感じており、その理由は「日本のスポーツの多くが部活動から来ているから」なのではないかと考えています。 部活動は教育的な背景があります。ですから競技力向上だけを狙っていません。 みんなで一緒に辛い練習をし、終わった後に充実感があるということは部活の醍醐味であり、一体感があります。 苦しくても頑張ればいいことがあると学び、苦しい時に仲間と助け合うことを学ぶことは教育的にはとてもいいことだと思います。 ただ、それがパフォーマンスを本当に向上させるかというと、そうとは限らず、合理性を追求したら苦しい思いをする必要がない場合もあるのです。 例えば、持久性が必要ないスポーツの選手が走り込みを行うといったようなことです。 充実感はありますが、競技力は向上しません。 繰り返しになりますが、大事なのは「辛い練習」と「パフォーマンスが向上する練習」は違い、パフォーマンスが向上する練習でも辛くない練習はあるということを前提に、毎回意識して立ち返る必要があるということです。 その見極めを自分なりに手に入れるには、結局自分がやっている競技の一番重要なことは何かと考え、それを向上させるために一番良い練習方法が何だろうか、と考え抜くことだと思います。 さらにそれを考え抜くために一番良いのは、練習時間をギュッと凝縮して本当に重要なことだけしかできない状況に自分を追い込むことだと思います。 そうすると「本当に意味があること」しかできなくなるため、結果として競技力向上に直結するような練習を選択するようになります。