ここからが面白いところ
仙台大明成と藤枝明誠の続き
NBAワシントン・ウィザーズで活躍する八村塁を育てた仙台大明成の佐藤久夫ヘッドコーチ(HC、72)が、試合残り時間わずか2分となったところで突然、選手たちに向かって叫んだ。「ここからが面白いところ!」 7月29日、四国高校総体男子バスケットボール3回戦の藤枝明誠戦。その時、スコアは76―85。スタートから5本連続でシュートを決められ、劣勢に立たされた明成が、9点差から逆転できるか。緊迫した場面での意外なゲキに、呼応したのは、敵将の日下部二郎ヘッドコーチ(65)だった。「お前たち、ここからの勝負を楽しめ!」 「気合を入れろ」でも「諦めるな」でもなく、楽しめ、という両指揮官からの声。火花を散らし合いながらも、両陣営がどこかで調和する空気が流れる中で、試合終了のブザーが鳴った。結果は79―93。優勝候補と目された仙台大明成はベスト8にも進めず、敗退した。 敗戦後、藤枝明誠の選手たちの健闘を拍手してねぎらった佐藤HCは「私の指導力のなさかも。やはり昭和のバスケではダメかな」。こう言って苦笑いをしていた。 「いえいえ、全然『昭和』じゃなかったですよ」と突っ込みを入れたくなった。敗因は、207センチある藤枝明誠の留学生にゴール下を支配されてしまい、リバウンドを取られまくったことのはずだ。ここへの対処ができていれば勝敗は分からなかっただろう。そもそも根性論重視だったはずの「昭和のバスケ」に「面白い」は似つかわしくない。 40年以上の指導歴の中で、佐藤HCは「心技体」の中でも、とりわけ「心」の持ち方を重視して来たという。それは単なる精神論とは違う。目の前の勝負よりも、選手一人ひとりの爽籟を見据えているようにも思えた。 ポツリと「明成は夏に弱いねえ」とも。確かにウインターカップでは6度も優勝しているのに、総体での優勝は2015年の1度だけだ。不躾ながら「なぜですかね?」と尋ねてみた。 「(夏は)辛いものを食べないからじゃないかな。もっと辛いバスケットをやらなきゃあ…」。敢えて「昭和的」なコメントもするところが、また味わい深かった。冬には「辛いけど、面白い」という最強のチームに仕上げて来そうだ。
佐藤久夫先生も日下部二郎先生も、
残り2分で選手にかける言葉が素敵ですね。
こんな先生に教わりたい、バスケットを指導してほしい、
そんなふうに感じました。
自分は高校生にそんな言葉をかけているだろうか?
勝っている場面でも、負けている場面でも、
選手が楽しそうにバスケットをする雰囲気を作れているだろうか、
そんなことを考えさせられた記事の紹介です。
話は変わり、記事の中にあった
「藤枝明誠の留学生にゴール下を支配され〜〜」
という部分ですが、前回の監督室で佐藤久夫先生の試合後の談話を紹介しました。
「ゾーンを引っ張りすぎた、あれだけ外が入るならマンツーにするべきだったかもしれない」
という内容だったのですが、
それこそ留学生にもっとやられたのではないか、ゾーンを継続した選択肢は間違っていないというのが私の意見です。
明成が留学生のインサイドを警戒する中、ゾーンを崩すパス回しと3Pを決め切った藤枝明誠を褒めるべきで明成のゾーン選択は必然だったように感じます。
勝てば官軍負ければ賊軍
指導者は負けたら色々言われるし、自分でも後悔するものです。
練習でずっと取り組んできたゾーンを、相手に合わせてマンツーに変更し、結果が出なかった反動の方が大きいと私は感じます。
練習でやってきたことしか試合では出ないのです。